James Vincent / Waiting For The Rain (1978年) – アルバム・レビュー

2019年11月12日

おすすめのアルバムをショート・レビューで紹介する「アルバム・レビュー」。今日は、James Vincentの1978年のアルバム『Waiting For The Rain』の紹介です。

James Vincent / Waiting For The Rain (1978年) フロント・カヴァー

James Vincentは、アメリカのラテン・ロック・グループのAztecaに在籍したギタリスト。といっても、1972年のファースト・アルバム『Azteca』に参加した後にグループを離れてソロ活動を始めており、80年までに4枚のアルバムを残している。この『Waiting For The Rain』は、3枚目のアルバム。

Aztecaは大所帯のグループで、ファースト・アルバムにはNeal Schonもギタリストとして参加していた。Neal Schonも1枚のみでAztecaを離れ、直後にJourneyを結成している。

James Vincentの最初の2枚のアルバムは、テクニカルなインストゥルメンタル曲が中心だが、本作はヴォーカル曲が中心。2曲(3, 10)を除いて、James Vincentのソウル・フィーリングのある歌声を聴くことができる。

収録された10曲には、他作の3曲がある。アコースティック・ギターの小品「Etude #20」は、アメリカのジャズ・ギタリスト、Jimmy Wybleの作。また、「Daniel, Daniel」を書いたPatrick Cockettと、タイトル曲「Waiting For The Rain」を書いたCarlos Andradeは共に、ハワイのThe Hula Blues Bandのメンバーだ。

「What Does It Profit A Man?」「How Can I Thank You Enough」「The Seventh Day」は、軽やかなグルーヴに乗せた極上のメロウ・チューン。The Hula Blues Bandのメンバー作の「Daniel, Daniel」「Waiting For The Rain」もメロウだが、そちらは南国のしっとりした湿度を湛えた、ひと味違うメロウ感覚。

一方、「Resistance」や「Babylon Is Fallen」は、70年代前半のスピリチュアルなSantana、あるいはMahavishnu Orchestraあたりを彷彿とさせるジャズ・ロック。

また、Chicagoのようなブラス・ロックの「People Of The World」「Soon Comes The Son」もある。James Vincentは60年代にThe Exceptionsというバンドに在籍しており、そこにはChicago結成前のPeter Ceteraもいた。そうした影響もあるかも。

ジャンルの垣根を越えて音楽性を融合させる、まさに "クロスオーバー" なアルバム。なお、James Vincentは97年にアルバム制作を再開し、ジャズ・ロック寄りのアルバムを自主制作している模様。Apple Musicなどで検索すると、8枚ほどが見つかる。

●収録曲
  1. What Does It Profit A Man? - 4:50
  2. Resistance - 4:52
  3. Etude #20 - 1:16
  4. Daniel, Daniel - 3:10
  5. People Of The World - 4:39
  6. How Can I Thank You Enough - 4:55
  7. Soon Comes The Son - 3:48
  8. Waiting For The Rain - 3:12
  9. The Seventh Day - 6:11
  10. Babylon Is Fallen - 3:09

◆プロデュース: James Vincent(vo, g, k)

◆参加ミュージシャン: Ron Stockert(k), Steve Evans(b), Tom Donlinger(ds), Pat Murphy(per), Carla Vincent(per, bv), Seawind Horns

スポンサーリンク