Hirth Martinez / Hirth From Earth (1975年) – アルバム・レビュー
おすすめのアルバムをショート・レビューで紹介する「アルバム・レビュー」。今日は、Hirth Martinezの1975年のアルバム『Hirth From Earth』の紹介です。
Hirth Martinez(ハース・マルティネス)はシンガー・ソングライターやセッション・ギタリスト、また詩人としても活動するロサンゼルス生まれのミュージシャン。The BandのRobbie Robertsonに才能を見出され、この『Hirth From Earth』でアルバム・デビューをしている。Robbie Robertsonは本作のプロデュースとアレンジを担当し、さらにリード・ギターも弾いている。
アルバム・カヴァーのモノクロ写真は、Norman Seeffの撮影したもの。コートに帽子とサングラスというシックな装いのHirthが、ステッキを片手に、アルバム・タイトルの "地球からやってきたハース" よろしく海から現れる。ちょっと不気味だけど、ユーモラス。小倉エージ氏のCD解説によると、Hirth Martinezは足が悪いらしく、それがステッキを手にしている理由らしい。
音の方も飄々としている。ゆったりとしたボサノヴァ感覚の「Altogether Alone」やフォーキーな「Winter Again」、ソウル・ジャズ風のファンキーな「Djinji」や「That's The Way It's Gotta Go」、優しいラヴ・ソングの「Be Everything」、サンバ風の「I Don't Know Why The Hell」など、バラエティに富んでいる。
Hirthのヴォーカルがまた独特。バラード系でソフトに優しく歌ったかと思えば、別の曲ではよれたダミ声で歌ったりと、自由にやっている。
「Comin Round The Moon」では、Robbie Robertsonの味のあるギターを聴くことができる。The BandからはGarth Hudson(k)も参加しており、The Band風ロック・ナンバーの「Pity On The Fool」もかっこいい。
このアルバムは、金澤寿和さんの著書『AOR Light Mellow』でも "謎の名盤" として紹介された。「Altogether Alone」は確かにAOR感覚だが、歌の中身は、UFOに遭遇した男が "一人でも充実した人生が送れるさ" と、宇宙人から励まされる奇妙なストーリー。アルバムのインナーには、UFOとの遭遇を描いたおかしなイラストが使われており、これは娘が描いたものだとか。謎めいた迷盤です。
- ●収録曲
- Altogether Alone - 3:55
- Winter Again - 3:58
- Djinji - 2:47
- Be Everything - 2:31
- Comin Round The Moon - 3:30
- It - 3:52
- That's The Way It's Gotta Go - 3:33
- Silent Movies - 3:00
- Pity On The Fool - 3:36
- I Don't Know Why The Hell - 2:37
- Saturday Night - 3:08
- Cold Dark Mornin' - 3:40
- You Are A Star - 3:45
◆プロデュース: Robbie Robertson(ar, g)
◆参加ミュージシャン: Hirth Martinez(vo, g), Garth Hudson(k), Chuck Rainey/Bob Boucher(b), Russ Kunkel/Spider Webb Rice(ds), Ben Keith(pedal steel), Robert Margouleff/Malcolm Cecil(sy), etc
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