Bill Hughes / Dream Master (1979年) – アルバム・レビュー

2023年5月4日

おすすめのアルバムをショート・レビューで紹介する「アルバム・レビュー」。今日は、Bill Hughesの1979年のアルバム『Dream Master』の紹介です。

Bill Hughes / Dream Master (1979年) フロント・カヴァー

Bill Hughes(Billie Hughes)はテキサス生まれのシンガー・ソングライター。大学時代にLazarusというソフト・ロック系のグループを結成し、PP&M(Peter, Paul & Mary)のPeter Yarrowに見出されて、71年と73年に2枚のアルバムを出している。その後、77年にLazarusを解散してソロとなり、カナダのCBSと契約してリリースしたアルバムが本作。

日本では当時、本作とDick St. Nicklausの『Magic』が関西地区限定という珍しい方法で発売され、すぐに反響を呼んで全国展開が図られている。

全曲がBill Hughesの作で、憂いを帯びたメロディがほのぼのとした郷愁を誘う。アコースティックを基調とするサウンドは繊細で美しく、Bill Hughesの優しいヴォーカルがとてもロマンティックに響く。

「Stealin' My Heart Away」の哀愁のメロディは、他のAOR系の作品にはない独特のものである。「Waiting For You To Fly」「Quiet Moment」「Catch Me Smilin'」などのアコースティック・ナンバーの心地よさも格別。華美な演出を極力抑えて、素材の良さで聴かせる。

Bill Hughesの声には独特の温もりと透明感があり、情感を込めた丁寧な歌い方は優しさに溢れている。それに合わせるように、演奏の方もソフトで優しい。Jay Graydon(g), Jeff Porcaro(ds), Ernie Watts(sax)等、参加ミュージシャンはとても豪華だが、自らの技ではなく、曲の良さを引き出すことに腕をふるっているようだ。

ただ「Only Your Heart Can Say」では、後半に盲目のギタリストのJose Feliciano(ホセ・フェリシアーノ)がアコースティックとエレキの両方のギターで入魂のソロを披露しており、聴きどころ。

Billのセカンド・アルバムは12年後の『Welcome To The Edge / とどかぬ想い』(91年, Billie Hughes名義)で、おそらく日本のみのリリース。タイトル曲「とどかぬ想い」は、テレビ・ドラマ『もう誰も愛さない』(出演: 吉田栄作、山口智子ほか)の主題歌として使われ、オリコン・チャートの3位となるヒットを記録した。その後、Billは98年に50歳という若さで他界している。

Billが率いたLazarusの71年のファースト・アルバム『Lazarus』は、ワーナーの「AOR BEST SELECTION 1300」シリーズから昨年10月に日本(世界?)初CD化されており、お薦め。

●収録曲
  1. Stealin' My Heart Away - 3:38
  2. Dreams Come True - 3:29
  3. Waiting For You To Fly - 3:31
  4. Only Love - 3:00
  5. Lower Lights - 2:54
  6. Gypsy Lady - 3:42
  7. Quiet Moment - 2:53
  8. Catch Me Smilin' - 3:57
  9. Only Your Heart Can Say - 3:36
  10. Dream Master - 3:29

◆プロデュース: Henry Lewy, Bill Hughes(vo, ag), Dale Jacobs

◆参加ミュージシャン: Jose Feliciano(g, bv), Jay Graydon/Mitch Holder(g), Victor Feldman(k, per), Mike Melvoin(k), Wilton Felder/Mike Porcaro(b), Jeff Porcaro/Russ Kunkel(ds), Ernie Watts(sax), Renee Armand(bv), etc

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