Joe Jackson / Body And Soul (1984年) – アルバム・レビュー
おすすめのアルバムをショート・レビューで紹介する「アルバム・レビュー」。今日は、Joe Jacksonの1984年のアルバム『Body And Soul』の紹介です。
Joe Jacksonは英国出身の先鋭的なミュージシャン。世界有数の音楽学校の一つであるロンドンの王立音楽アカデミーで作曲を学び、その才能をポピュラー・ミュージックの分野で発揮している。
1979年に『Look Sharp!』でアルバム・デビューし、その後もロック、パンク、レゲエ、ジャンプ・ブルース/スウィングと、1作ごとにスタイルを変えるこだわりを持ちながらアルバムを作り続けている。出世作は、ニューヨークに活動拠点を移して制作された5作目の『Night And Day』(82年)で、ラテンの要素を取り入れたポップでクールな内容が人気を博し、全米アルバム・チャートの4位を記録。シングル「Steppin' Out」のヒット(米6位)も生まれている。
この『Body And Soul』はそれに続く6作目。前作との間に映画のサントラを手がけたことが影響したのか、先鋭的なものが影を潜め、メロディの良さと内省的な作詞が印象に残る落ち着いた内容になっている。また、ジャズの香りがするところも魅力。フロント・カヴァーもジャズ・サックス奏者の巨星、Sonny Rollinsの57年のアルバム『Sonny Rollins Vol.2』のカヴァーを再現したもので、Joe Jacksonの佇まいがとてもクールだ。
ここから、おすすめの4曲を紹介。
まずは、1曲目の「The Verdict」。ゴージャスで風格のあるホーン・セクションと静かなメロディの対比が印象的で、日本では当時、車のテレビCMで使われた。5曲目の「Go For It」もそうだが、ホーン・セクションを大々的に取り入れたナンバーが多い。
4曲目の「You Can't Get What You Want (Till You Know What You Want)」は本作のハイライト。シャープな演奏とキャッチーなメロディに乗せて、"何が欲しいか分かるまで、欲しいものは手に入らない" というメッセージを歌うナンバーで、何が欲しいのかよく分からなかった当時の自分にも共感するところがあって、よく聴いていた。ストーンズにも「You Can't Always Get What You Want / 無情の世界」という曲があるが、その理由を教えてくれるような曲。本作からのファースト・シングルになり、全米チャートでは15位をマーク。
Elaine Caswellとデュエットした「Happy Ending」は、甘酸っぱいメロディがとてもキャッチー。Elaine Caswell (エレーヌ・キャズウェル) はキュートで爽やかな声の持ち主だが、その歌声がフィーチャされたのはこの1曲くらいしかない。本作からのセカンド・シングルになり、UKチャートではこの曲が最上位(それでも58位)をマークしている。
バラード系では、ピアノの弾き語りをメインにしっとりと歌い上げる「Be My Number Two」のメロディが美しい。"僕のナンバー2になってくれないかな" という都合のいい口説き文句も、この曲のように控えめに歌われるとまんざら悪くない。バラード系では、よりシリアスでロマンティックな「Not Here, Not Now」もおすすめ。
このジャケットでも煙草を吸っているが、Joe Jacksonは喫煙家。禁煙が厳しくなったことを理由に長年住んだニューヨークを2006年頃に引き上げて、今はベルリンに住んでいる。ドイツの禁煙条例への反対活動にも参加しているようだ。
- ●収録曲
- The Verdict
- Cha Cha Loco
- Not Here, Not Now
- You Can't Get What You Want (Till You Know What You Want)
- Go For It
- Loisaida
- Happy Ending [feat. Elaine Caswell]
- Be My Number Two
- Heart Of Ice
◆プロデュース: David Kershenbaum, Joe Jackson(vo, k, sax, ar)
◆参加ミュージシャン: Graham Maby(b), Vinnie Zummo(g), Ed Roynesdal(k, violin), Tony Aiello(sax, flute), Michael Morreale(tp, flugelhorn), Gary Burke(ds), Elaine Caswell(vo), Ellen Foley(bv)
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