Don Brown / I Can’t Say No (1977年) – アルバム・レビュー

2019年11月29日

おすすめのアルバムをショート・レビューで紹介する「アルバム・レビュー」。今日は、Don Brownの1977年のアルバム『I Can't Say No』の紹介です。

Don Brown / I Can't Say No (1977年) フロント・カヴァー

Don Brownは、シアトルを中心に活動していたシンガー・ソングライター。ベーシストのGarrett Smithと "Brownsmith" というデュオ・グループを組んで活動していた頃の唯一のアルバム『Brownsmith』(75年)の人気が高いが、一枚でデュオを解消しており、ソロになって最初に発表したアルバムがこの『I Can't Say No』。

Don自らがプロデュースを担当し、曲作りに関しても、スタンダード・ナンバーの「Over The Rainbow」と、Lambert-Potter作の「Yesterday Can't Hurt Me」、Jimmy Cliff作の「Sittin In Limbo」をのぞく全曲の作詞と2曲(3, 7)の作曲を担当している。

参加したミュージシャンの多くが『Brownsmith』と共通するので、その続編のようなアルバム。Brownsmithの相棒のGarrett Smithも2曲(1, 6)を作曲している。「Romance And Magic」では、柑橘類を思わせるフレッシュなメロディが爽やかで、きらきらしたエレピとエレガントなサックスがとても上品。一方の「Tango」にはアコースティック基調の軽やかなグルーヴがあって、ヴォーカルとバック・コーラスもふんわりとソウルフル。

「Tango」と「Yesterday Can't Hurt Me」の2曲には、女性シンガーのEvie Sandsがバック・ヴォーカルで参加している。Lambert-Potter作の「Yesterday Can't Hurt Me」は、Sandsの74年のアルバム『Estate Of Mind』で歌われたポップ・ソウル・ナンバーだ。

タイトル曲の「I Can't Say No」では、Don Brownの情感をたたえた歌声が素晴らしい。静かなピアノに導かれてしっとりと歌い始め、柔らかいファルセットと軽やかなドラミングを織り交ぜながら曲が流れていく。淡々としているけれど、Steely Danの「Aja」のような静と動のコントラストがある。

緑とゴールドを基調としたフロント・カヴァーに写るDon Brownは、まるで茶室にいるかのように静かな佇まい。バック・カヴァーの黄金の木漏れ日も美しく、このアルバムのきらきらしたサウンドに合っている。

Don Brown / I Can't Say No (1977年) バック・カヴァー
●収録曲
  1. Romance And Magic - 3:44
  2. I Can't Say No - 4:54
  3. Hug On A Thrill - 5:32
  4. Over The Rainbow - 4:21
  5. Hold On - 3:40
  6. Tango - 3:51
  7. The Embryo - 1:20
  8. Mother - 3:50
  9. Smart Boy - 4:49
  10. Yesterday Can't Hurt Me - 3:20
  11. Sittin In Limbo - 3:23

◆プロデュース: Don Brown(vo, ag)

◆参加ミュージシャン: Dave Jackson(ar, k, bv), Grant Reeves(k, sax), Larry Sieber(k), Garrett Smith(b, bv), Chris Leighton(ds, per), Luis Peralta(per), Evie Sands(bv), etc

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