Michael Franks / The Art Of Tea (1975年) – アルバム・レビュー

2019年11月12日

おすすめのアルバムをショート・レビューで紹介する「アルバム・レビュー」。今日は、Michael Franksの1975年のアルバム『The Art Of Tea』の紹介です。

Michael Franks / The Art Of Tea (1975年) - アルバム・レビュー

Michael Franksはカリフォルニア生まれのシンガー・ソングライター。La Jolla(ラホヤ)という太平洋に面した学術都市の生まれだが、その音楽もとても知的で個性的。ボサノヴァ感覚の上品なメロディを粋なウィスパー・ヴォイスで歌うというスタイルをデビュー以来貫いており、一聴するとMichael Franksと分かる。

この『The Art Of Tea』は、Michael Franksのセカンド・アルバム。ファースト・アルバムは1973年にマイナー・レーベルから出されているので、本作はメジャー・デビュー作ということになる。プロデュースを担当したのはTommy LiPumaで、エンジニアをAl Schmitt、ストリング・アレンジをNick DeCaroが担当。LiPuma-Schmitt-DeCaroの "メロウ黄金トリオ" の手がけた作品だ。

1曲目の「Nightmoves」をMichael Smallという人が作曲していることを除けば、全曲がMichael Franksの作詞・作曲。The CrusadersのメンバーであるLarry Carlton(g), Joe Sample(k), Wilton Felder(b)を中心に、Michael Brecker/David Sanborn(sax)など、一流のジャズ・プレイヤーが参加しており、その演奏は控えめながら、強い魅力を放つ。例えば、「Nightmoves」の気だるさはCarltonのギターが、「愛の苦しみ」のきらきら感はJoe Sampleのエレピが作っている。

Michael Franksには目立ったヒット曲がないが、このアルバムからは「Popsicle Toes」がシングル・カットされ、Billboardのチャートでは43位をマークした。The Manhattan Transferが翌年のアルバム『Coming Out』で、この曲をいち早くカヴァーしている。

どの曲も素敵で、クオリティにムラがない。2枚目のシングルは「Monkey See-Monkey Do」と「Eggplant」のカップリングだが、ヒットはしなかったようだ。どちらも、Michael Franksならではのエレガントな味わい。大人を酔わすサウンド、若者を背伸びさせる音楽という感じ。

端正な顔立ちと知的な佇まい、シックなカヴァー・アートも魅力。"The Art Of Tea" というタイトルは、「茶の芸術って何?」と興味をそそる。知的という点では、Donald FagenやKenny Rankin、Ben Sidranも思い浮かぶが、Michael Franksは本物のインテリ。比較文学の博士号を持っており、博士論文は「現代歌曲の創作とその社会との関係」というテーマらしい。

●収録曲
  1. Nightmoves / 愛はむなしく - 4:03
  2. Eggplant - 3:34
  3. Monkey See, Monkey Do - 3:33
  4. St. Elmo's Fire / 聖エルモの火 - 3:58
  5. I Don't Know Why I'm So Happy I'm Sad / 愛の苦しみ - 4:16
  6. Jive - 3:16
  7. Popsicle Toes - 4:35
  8. Sometimes I Just Forget To Smile / 微笑みを失う時 - 3:45
  9. Mr. Blue - 4:03

◆プロデュース: Tommy LiPuma

◆参加ミュージシャン: Larry Carlton(g), Joe Sample(k), Wilton Felder(b), John Guerin(ds, per), Michael Brecker/David Sanborn(sax), Larry Bunker(vibes), Jerry Steinholtz(per), Nick DeCaro(string ar)

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