John Hall / Power (1979年) – アルバム・レビュー

2023年5月5日

おすすめのアルバムをショート・レビューで紹介する「アルバム・レビュー」。今日は、John Hallの1979年のアルバム『Power』の紹介です。

John Hall / Power (1979年) フロント・カヴァー

John Hallは、「Dance With Me」(75年, 米6位)のヒットで知られるOrleansの中心メンバー。1972年のバンド結成から77年までOrleansに在籍し、ギター、ヴォーカル、ソング・ライティングを担当した。本作は、77年にソロに転向したあとの2枚目のソロ・アルバムである。なお、Orleans結成前の70年にもアルバムがあるので、通算では3枚目のソロ・アルバムにあたる。

John Hallは本作のプロデュースを自ら担当し、全ての曲を奥様のJohannaと一緒に書いた。

タイトル曲の「Power」は穏やかなアコースティック・ナンバーで、ヴォーカルを担当したのはJames TaylorとCarly Simon夫妻。穏やかな曲調からは想像できないが、この曲は反原子力をテーマとするメッセージ・ソングであり、歌詞には自然エネルギーへの転換を切望する内容が綴られている。

1979年には次のような一連の出来事があり、反原発運動が盛んであった。


  • 原子炉のメルトダウンをテーマにしたパニック映画『チャイナ・シンドローム』の公開
  • 上映直後の3月にスリーマイル島の原発事故が発生
  • 反原発運動が起こり、ミュージシャンたちが「MUSE」(Musicians United for Safe Energy inc.)という反原発団体を結成
  • MUSEが「No Nukes / 原子力発電建設反対運動」コンサートをマジソン・スクエア・ガーデンで5日間にわたり開催

このNo NukesコンサートをJackson Browneと共に取り仕切ったMUSEの中心人物がJohn Hallである。再発されたCDのボーナス・トラックには「Plutonium Is Forever」というレゲエ調の陽気な曲が収録されているが、タイトルから想像されるように、こちらもテーマは反原子力。「Power」「Plutonium Is Forever」とも、No Nukesコンサートで歌われた。

"蛍の恋人" というロマンティックなタイトルの「Firefly Lover」もおすすめのアコースティック・ナンバー。また、「Arms / Half Moon」というかっこいいメドレーがあるが、「Half Moon」はJanis Joplinの71年の名作『Pearl』の収録曲。Janisのこの名曲も、John HallとJohanna夫妻の作だと初めて知った。

ミュージシャンでありながら活動家でもあるJohn Hallは、2007年から4年間、民主党の下院議員として政治活動をしており、まったく驚き。2012年にはOrleansに復帰し、現在はミュージシャンとして活動中らしい。

このアルバムは金澤寿和さんの著書『AOR Light Mellow』に紹介されている。AORは反原子力のようなシリアスなテーマや政治とは無縁と思っていたが、意外なところに接点があった。

●収録曲
  1. Home at Last - 4:40
  2. Power - 4:46
  3. Heartbreaker - 3:26
  4. So - 5:38
  5. Run Away with Me - 3:02
  6. Firefly Lover - 3:51
  7. Arms / Half Moon - 6:31
  8. Cocaine Drain - 4:38
  9. Plutonium Is Forever (ボーナス・トラック)

◆プロデュース: John Hall(vo, g, ar)

◆参加ミュージシャン: Louis Levin(k), David Schwartz(b), Eric Parker(ds), Jody Linscott(per), Bryan Cumming(sax), Mike Mainieri(vib), Lynn Pitney/Phil Ballou/James Taylor/Carly Simon(bv), etc

なお、『チャイナ・シンドローム』はDVDで、No Nukesコンサートの模様はCDで入手可能。

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