Bertie Higgins / Just Another Day In Paradise (1982年) – アルバム・レビュー

おすすめのアルバムをショート・レビューで紹介する「アルバム・レビュー」。今日は、Bertie Higginsの1982年のアルバム『Just Another Day In Paradise / カサブランカ』の紹介です。

Bertie Higgins / Just Another Day In Paradise (1982年) フロント・カヴァー

Bertie Higginsはフロリダ出身のシンガー・ソングライター。60年代から音楽活動をしていて、長い下積みを経験したあとにこの『Just Another Day In Paradise / カサブランカ』でデビューしている。

このアルバムは日本でもヒットし、オリコンの週間アルバム・チャートの4位をマークした。その後押しをしたのは、アルバム2曲目に収録された「Casablanca」を「哀愁のカサブランカ」というタイトルでカバーした郷ひろみ。「哀愁のカサブランカ」は、オリコンの週間シングル・チャートの2位を記録するヒットになり、その勢いで原曲の「Casablanca」もオリコンの洋楽シングル・チャートの8週連続1位を記録。82年の年間チャートでは1位に輝いている。

この曲の哀感あふれるメロディはとても印象深いもので、Bertie Higginsといえばこの「Casablanca」を思い出す(郷ひろみのカバーではなく…)。タイトルから分かるように、1942年の映画『カサブランカ』を題材にしていて、サビの "a kiss is still a kiss in Casablanca" というフレーズがロマンティック。

一方、本国のアメリカでは「Casablanca」はシングル・カットされていない。ファースト・シングルは4曲目の「Key Largo」で、全米シングル・チャートの8位をマーク。タイトルの "キー・ラーゴ" はBertie Higginsの地元フロリダ州の最南端にある島で、曲調もトロピカルで穏やかな雰囲気に満ちている。この曲もまた、「Casablanca」と同じように古い映画の『Key Largo』(1948年)を題材にしていて、"We had it all just like Bogey and Bacall" というくだりのBogeyは主演のハンフリー・ボガードを、Bacallはローレン・バコールを指している。

1曲目の「Just Another Day In Paradise」も波の効果音で始まるトロピカル・ムードの曲で、邦題は「ふたりだけの恋の島」。この曲はセカンド・シングルとなり、全米チャートの46位に到達している。なお、アルバムはBillboard 200チャートの38位をマークした。

3曲目の「Candledancer」もおすすめのナンバー。ミディアム・テンポのメロウな曲で、Bertie Higginsの情感を込めた歌や甘いサックス・ソロ、繊細で美しいストリングスが絶品。無機質でクールな印象のサウンドが盛いを増していた80年代にあって、このアルバムにはハートフルなメロディと温もりのあるサウンドが溢れている。

なお、冒頭のお洒落な画像は日本盤のジャケットのもので、オリジナルのジャケットには南国のムード溢れる下のデザインが使われている。

Bertie Higgins / Just Another Day In Paradise (1982年) オリジナル・フロント・カヴァー

波の音で始まる「Just Another Day In Paradise」やトロピカルなムードの「Key Largo」、そのものズバリのタイトルの「The Tropics」など、オリジナルのデザインに相応しい曲が揃っているので、わざわざ差し替えなくてもいいのだが、日本盤のお洒落なジャケットがとてもキャッチーで、一度見たら忘れない。

Bertie Higginsは日本では「Casablanca」の一発屋と思われているが、息の長い活動をしている。現在もアルバムやシングルを制作しており、例えば2015年の『Dancing in the Tradewinds』などはアコースティックな好盤。本作収録の「The Tropics」もラストで歌っている。

●収録曲
  1. Just Another Day in Paradise / ふたりだけの恋の島 - 3:56
  2. Casablanca - 4:34
  3. Candledancer - 3:48
  4. Key Largo / キー・ラーゴ~遙かなる青い海 - 3:20
  5. Port O' Call (Savannah '55) / 愛してるよ、サヴァンナにて。1955年 - 3:26
  6. White Line Fever - 3:59
  7. The Heart Is the Hunter / 愛すれど心さびしく - 3:27
  8. She's Gone to Live on the Mountain / きみ去りし今 - 3:26
  9. Down at the Blue Moon / ブルー・ムーンに届けておくれ - 3:57
  10. The Tropics / トロピカル・ハリケーン - 7:00

◆プロデュース: Sonny Limbo, Scott Maclellan

◆参加ミュージシャン: Bertie Higgins(vo, ag), Barry Richmond/Ken Bell/Shelton Irwin(g), John Healy/Steve Nathan(k), Gary Baker/Arch Peason III(b), Owen Hale/Bill Marshall(ds), etc

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