Valerie Carter / Wild Child (1978年) – アルバム・レビュー
おすすめのアルバムをショート・レビューで紹介する「アルバム・レビュー」。今日は、Valerie Carterの1978年のアルバム『Wild Child』の紹介です。
Valerie Carterはフロリダ生まれの女性シンガー・ソングライター。彼女は1974年にHowdy Moonという3人組のフォーク・ロック・グループでデビューし、アルバムを1枚残して解散した後はJames Taylorなどのバック・ヴォーカルをつとめ、77年にアルバム『Just a Stone's Throw Away / 愛はすぐそばに』でソロ・デビューを果たした。
本作はValerie Carterのセカンド・アルバム。前作ではLittle FeatのLowell GeorgeやEW&FのMaurice White等がプロデュースを担当し、参加ミュージシャンもLittle FeatやEW&Fのメンバーが中心。本作では、James Newton Howardのプロデュースのもと、TOTOのメンバーやJay Graydon/Ray Parker Jr.(g)などのセッション・ミュージシャンがバックを固め、とても洗練された演奏とサウンドになっている。
収録曲に関しても、Valerie Carterが関わった5曲(1, 3-6)以外は、David Lasley(7)、Tom Snow(8)、David Batteau(10)などのAOR系のソングライターが曲を提供し、シティ・ポップスのような華やかさがある。
彼女の歌声は可憐でキュートだけど、どこか寂しげ。ミステリアスな佇まいも魅力的。どれだけ曲が爽やかで、サウンドが華やいでいても、彼女の声は物憂げで、別の場所から響いてくるみたい。特に、2曲目の「Da Doo Rendevous」やラストのタイトル曲「Wild Child」の歌声には、強く引き寄せられてしまう。
「Lady In The Dark / 暗闇の中の女」などはTOTOのファースト・アルバムに入っていそうな元気なロック・チューンだが、彼女が歌うと独特の憂いを帯びる。アップ・テンポの「Crazy」や爽やかな「What's Become Of Us」もそんな感じ。
このアルバムではJeff Porcaroが全曲のドラムスを担当しており、演奏にJeffらしい味わいがある。私の持っているCDのライナー・ノーツには、Valerie Carterが93年10月に記したコメントがあり、Jeffが他界した翌年ということもあって、次のように書かれている。
"個人的には、このアルバムや『愛はすぐそばに』を聴くたびに、親しい友人であり、世界でも指折りの名ドラマーとして知られたジェフ・ポーカロの死を思い出して、涙があふれてしまうのです。" ('93年10月 ヴァレリー・カーター)
- ●収録曲
- Crazy - 4:29
- Da Doo Rendevous / ランデヴー - 4:36
- What's Become Of Us - 3:34
- Taking The Long Way Home / 家路 - 3:31
- Lady In The Dark / 暗闇の中の女 - 4:40
- The Story Of Love / 恋物語 - 4:08
- The Blue Side - 3:27
- Change In Luck - 4:47
- Trying To Get To You / あなたをつかまえたい - 4:08
- Wild Child - 4:46
◆プロデュース: James Newton Howard(k, string ar)
◆参加ミュージシャン: Steve Lukather/Jay Graydon/Ray Parker Jr.(g), Victor Feldman(k, vib, per), Fred Tackett/Davey Johnston(ag), Steve Porcaro(k), David Hungate/Chuck Rainey/Verdine White(b), Jeff Porcaro(ds), Lenny Castro(per), Tom Saviano(sax), David Lasley/Vini Poncia(bv), Tom Tom 84(horn ar), etc
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