TOTO / Fahrenheit (1986年) – アルバム・レビュー
おすすめのアルバムをショート・レビューで紹介する「アルバム・レビュー」。今日は、TOTOの1986年のアルバム『Fahrenheit』の紹介です。
TOTOはロサンゼルスで活躍していた一流のセッション・ミュージシャンたちが作ったロック・バンド。1977年に結成した彼らはデビュー作の『宇宙の騎士』(78年)からヒットを飛ばし、4作目の『聖なる剣』(82年)では6部門のグラミー賞を受賞するまでに人気と実力を伸ばしている。この『Fahrenheit』は6作目で、現リード・ヴォーカルのJoseph Williamsが初めて参加したアルバム。Josephは映画音楽の作曲家であるJohn Williamsの息子で、TOTOの主要メンバーとは地元の仲間どうしだった。
TOTOの初代リード・ヴォーカルのBobby Kimballは『聖なる剣』の後にバンドを離れ、5作目の『Isolation』(85年)では、元TrillionのFergie Frederiksenがリード・ヴォーカルを担当している。その結果、高音でメタリックなFergieの声を生かしたロック色の強い作品になったが、Fergieは1枚でバンドを脱退。Joseph Williamsをリード・ヴォーカルに迎えた本作は、再び『聖なる剣』のAOR路線に回帰している。
Josephのヴォーカルは、湿度を感じさせない爽快な声質。また、歌い回しがとても柔軟なので、ロック、バラード、R&B、レゲエと多彩に変化するTOTOの楽曲を、起伏のある演奏に合わせて器用に歌いきっている。曲作りにおいても、1曲目の「Till The End」を始め、収録曲の半分(1, 2, 4, 6, 8)を手がけた。
「Without Your Love」と「I'll Be Over You」の2曲では、Lukatherがリード・ヴォーカルを担当している。メロディの綺麗なバラードの「I'll Be Over You」は、Billboard Hot 100チャートの11位になるヒットを記録。この曲は、LukatherとRandy Goodrumの共作で、Michael McDonaldの柔らかいバック・ヴォーカルも印象的。R&Bタイプの「Without Your Love」は、ACチャートの7位を記録した。
ラストのジャズ・ナンバー「Don't Stop Me Now」はLukatherとPaichの共作。クールなトランペットはMiles Davisで、TOTOのアルバムにジャズ界の大物が参加したことで話題になった。
他にも、David Sanborn(sax)やTom Scott/Larry Williams(horns), Don Henley/Michael McDonald(bv)など、多彩なゲスト・ミュージシャンを迎えて制作しており、TOTOのアルバムとしては珍しい。前任のリード・ヴォーカルだったFergie Frederiksenも、「Could This Be Love」にバック・ヴォーカルで参加している。
- ●収録曲
- Till the End - 5:17
- We Can Make It Tonight - 4:16
- Without Your Love - 4:33
- Can't Stand It Any Longer - 4:40
- I'll Be Over You - 3:50
- Fahrenheit - 4:39
- Somewhere Tonight - 3:46
- Could This Be Love - 5:14
- Lea - 4:29
- Don't Stop Me Now - 3:05
◆プロデュース: TOTO
◆参加ミュージシャン: Joseph Williams(vo), Steve Lukather(g, vo), David Paich(k, bv), Steve Porcaro(sy), Mike Porcaro(b), Jeff Porcaro(ds, per)
with David Sanborn(sax), Michael McDonald/Fergie Frederiksen/Don Henley(bv), Miles Davis(tp), Lenny Castro/Steve Jordan/Jim Keltner/Joe Porcaro(per), Jerry Hey/Tom Scott/Larry Williams(horns), etc
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