笠井 紀美子 / KIMIKO (1982年) – アルバム・レビュー

2019年11月12日

おすすめのアルバムをショート・レビューで紹介する「アルバム・レビュー」。今日は、笠井 紀美子の1982年のアルバム『KIMIKO』の紹介です。

笠井 紀美子 / KIMIKO (1982年) フロント・カヴァー

笠井紀美子は日本を代表するジャズ・シンガーの一人。70年代、80年代を中心に20枚ほどのアルバムを制作していて、その中でGil EvansやHerbie Hancock等と共演するなど、世界を舞台に活動してきた。今は1987年に始めた宝飾デザインの仕事を本業にしており、サンタモニカに在住しながら宝飾品ブランドの「kimiko by KIMIKO」を運営している。

私が初めて聴いた笠井紀美子のアルバムは、Kimiko Kasai & Herbie Hancock名義の79年のアルバム『Butterfly』だ。Herbie HancockのCD BOXセット『The Complete Columbia Album Collection 1972-1988』に収められていて、"Herbie Hancockとコラボした日本の女性シンガー" として感銘を受けた。

この『KIMIKO』は『Butterfly』に続くアルバム。2016年8月のソニー「AOR CITY 1000」シリーズからCDが再発されたことから分かるように、AORと呼ぶに相応しい華やかで洗練されたサウンドになっている。

AOR的な視点では、Richard Page - Marc Jordan - Jay Graydonの豪華3人が共作したアップ・テンポなナンバー「The Right Place」や、David Lasley等が書いたソフトなバラード「I Wish That Love Would Last」が目を惹く。

プロデューサーのRichard Rudolphもレゲエ調の「Steppin' Outside Tonight」とメロウな「I'm So Much In Love」、「Love Is All We Need」を提供しており、このうち「I'm So Much In Love」に関してはStevie Wonderとの共作だ。

Richard Rudolphは79年に他界したMinnie Ripertonの夫。有名な「Lovin' You」も二人で書いた曲だ。笠井紀美子の繊細で美しいヴォーカルは、どこかMinnie Ripertonを思わせるところがあり、特に2, 4, 6, 7のようなメロウな曲での歌声はMinnie Ripertonのようにチャーミング。

笠井紀美子は90年にRichardと再婚し、今もサンタモニカで暮らしている。笠井紀美子の歌う「Lovin You」もきっと素敵だろうと思うのだが、それは実現しないのかな。

●収録曲
  1. The Right Place - 4:43
  2. Looking For Love - 4:39
  3. Steppin' Outside Tonight - 4:37
  4. I'm So Much In Love - 4:11
  5. I Felt You Glancin' - 3:57
  6. Love Is All We Need - 5:03
  7. I Wish That Love Would Last - 3:58
  8. Over You - 4:11

◆プロデュース: Richard Rudolph

◆参加ミュージシャン: Paul Jackson Jr./Michael Sembello(g), Randy Waldman/Bobby Lyle(k), Jimmy Johnson/Nathan Watts(b), Tony Lewis/Steve Turner(ds), David Boruff(sax), Bill Reichenbach(tb), Michael Fisher/Paulinho Da Costa(per), Darryl Phinnessee/John Lehman/Lisa Roberts/Marti McCall(bv), etc

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