Cecilio & Kapono / Night Music (1977年) – アルバム・レビュー

2023年5月5日

おすすめのアルバムをショート・レビューで紹介する「アルバム・レビュー」。今日は、Cecilio & Kaponoの1977年のアルバム『Night Music』の紹介です。

Cecilio & Kapono / Night Music (1977年) フロント・カヴァー

Cecilio & Kaponoはハワイの男性ポップ・デュオ。Henry Kapono Ka'aihueはネイティヴ・ハワイアンだが、Cecilio David Rodriguezの方はカリフォルニア生まれ。1973年にデュオを結成し、これまでに10枚ほどのアルバムを残している。この『Night Music』は彼らのサード・アルバムだ。

フロント・カヴァーでは、暮れていく空の青と夕焼けに染まる水平線の淡いオレンジが美しい。ハワイを代表するアンスリウムの赤い花も色鮮やかだ。この素晴らしい景色の中で、髭をたっぷりたくわえた長髪の男二人が見つめ合う…。横顔から見分けるのは難しいけれど、左がCecilioで右がKaponoかな。

ジャケットの蒸し暑さと裏腹に、内容の方はアコースティック感覚の爽やかなサウンド。二人の息の合ったヴォーカル・ハーモニーもナチュラルでさらっとしており、湿度を感じさせない。

収録曲のうち、「The Nightmusic」はKim Carnesのご主人でソングライターのDave Ellingsonの作。また、「We're All Alone / 二人だけ」ではBoz Scaggsの書いたバラードの名曲をカヴァー。残りは彼らのオリジナルで、Cecilioが3曲(2, 8, 9)、Kaponoが6曲(3, 5-7, 10, 11)を書いている。

この中から、おすすめの4曲をピック・アップ。

1曲目の「The Nightmusic」はアルバムのタイトル曲。ミディアム・テンポの穏やかなナンバーで、演奏もリラックスしている。4分強の曲だが、ヴォーカル・パートは2分40秒あたりで終わり、残りのインスト・パートでは落ち着いた演奏に美しいストリングスを幾重にも重ねてムードを盛り上げていく。繊細なストリングス・アレンジを担当したのはNick DeCaro。アルバムの全編にわたって、匠の技で曲を美しく装飾している。

「Have You Ever Had That Feelin'」は本作のハイライトの1曲。Alan Pasquaの演奏する綺麗なエレピの音に導かれて曲が静かに始まり、しばらくするとグルーヴィなアンサンブルへと展開していく。間奏でTom Scottのフルートが流れ出すとメロウ度数が一気にアップ。DeCaroのストリングスと相まって、亜熱帯の湿度を吹き飛ばす爽快な聴き心地になる。

Boz Scaggsの「We're All Alone」も涼やかなアコースティック・バージョンに変身。原曲ではBozがしなやかにひたむきに歌うが、ここでは二人のナチュラルなハーモニーを生かしながら終始爽やかに聴かせる。間奏のアコースティック・ギターの爪弾きもリゾート・ミュージック風で気持ちいい。

「Make It Up To You」は心地よいソウル・フィーリングのあるメロウ・ナンバー。2017年夏に好評を博したソニーのAORリイシュー企画「AOR CITY 2017」ではCD3枚組のコンピレーション・セット『Light Mellow - Sealine』も発売されていて、Cecilio & Kaponoからはこの曲がセレクトされている。

二人ともソロ活動を行っているが、特にHenry Kaponoの方は精力的で、発表したソロ・アルバムの枚数も多い。91年のアルバム『Same World』にはMichael McDonaldやTOTO, Third World, Tower of Power等が参加。Michael McDonaldとはタイトル曲を含む2曲で共演し、いい仕上がりのAORナンバーになっている。

●収録曲
  1. The Nightmusic - 4:06
  2. Love By The Numbers - 5:02
  3. After The Omen - 3:03
  4. We're All Alone / 二人だけ - 3:27
  5. Have You Ever Had That Feelin' - 4:40
  6. Climb The Line - 3:20
  7. Make It Up To You - 3:13
  8. Here With You - 4:27
  9. I Love You - 3:06
  10. Longing - 1:56
  11. Sallin' - 5:05

◆プロデュース: Bruce Botnick, Terry Powell, Cecilio & Kapono

◆参加ミュージシャン: Cecilio(vo, g, harmonica), Kapono(vo, g)
with Randy Lorenzo(vo, b), Alan Pasqua(k), Artie Alinikoff(ds), Tom Scott(sax, flute), Kevin Calhoun(per), Nick DeCaro(strings ar)

スポンサーリンク