風を感じるAORソング~おすすめの10曲

2024年1月4日

AORには、アルバムや曲のタイトルに「風」という邦題が含まれるものが割りと多く見られます。内容とタイトルが必ずしも一致しないことも多く、メロディやサウンドから受ける印象が「風が吹き抜けるように颯爽」としていたり、「そよ風の優しい肌触りのように爽やか」なので、イメージ先行でそのような邦題が付けられたのでしょう。このページでは、そのような「風を感じる」AORソングをセレクトしてみました。

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What You Won't Do For Love / 風のシルエット (1978年)

Bobby CaldwellはNYのマンハッタン生まれ、マイアミ育ちのシンガー・ソングライター。ソフト帽姿で哀愁のメロディをソウルフルかつエモーショナルに歌う姿は大人の魅力に溢れており、日本では "ミスターAOR" と呼ばれて、Boz Scaggsと並ぶ高い人気を誇ります。「What You Won't Do For Love」はデビュー・シングル。Billboard Hot 100チャートの9位となるヒットを記録した、キャリアを代表する1曲です。「風のシルエット」という邦題も秀逸。収録アルバムのジャケットは "黄昏のシルエット" の趣きですが、"風の" としたセンスが見事です。

Bobby Caldwell / Bobby Caldwell

●収録アルバム:Bobby Caldwell / Bobby Caldwell (イヴニング・スキャンダル) (1978年)

Bobby Caldwellのデビュー・アルバム。収録曲は、共作も含めて全てBobby Caldwellのオリジナルで、R&B/ソウルをベースとする洗練された曲を揃えています。ロマンティックなアート・ワークも含め、トータルにスタイリッシュなアルバムです。

Christopher Cross / Ride Like The Wind (風立ちぬ) (1979年)

清涼感のある澄み切った歌声が魅力のシンガー・ソングライター、Christopher Crossのデビュー・シングルです。Billboard Hot 100チャートの2位となるヒットを記録しました。効果音に風の音が使われたこの曲は、タイトル通りの颯爽とした曲。「風立ちぬ」という粋な邦題は、松田聖子の2年後のヒット曲と同じですが、こちらが先です。アルバムには "Dedicated to Lowell George" と記されており、同年に他界したLittle FeatのLowell Georgeに捧げられた曲であることが分かります。

Christopher Cross / Christopher Cross (南から来た男)

●収録アルバム:Christopher Cross / Christopher Cross (南から来た男) (1979年)

Christopher Crossのデビュー・アルバム。最も華々しい成果をあげたAORのアルバムの1つとされています。Billboard Hot 100チャートの1位を獲得した「Sailing」を始め、「風立ちぬ」(2位)、「Never Be The Same」(15位)、「Say You'll be Mine」(20位)がシングル・ヒットし、アルバムもBillboard 200チャートの6位をマーク。1980年のグラミー賞では、「Album of the Year」(本作)、「Song of the Year」(Sailing)、「Best New Artist」(Christopher Cross)を含む5部門を受賞しました。

Seawind / The Two of Us (ふたりは風) (1980年)

Seawindはハワイ出身のフュージョン・グループ。中核はドラマーのBob Wilsonで、その奥様のPauline Wilsonがヴォーカルを担当しています。Pauline Wilsonは、キュートな美声を持ちながら、グループの強力な演奏に負けないパワフルな歌唱をする実力派。「ふたりは風」は、4枚目のアルバム『Seawind / 海鳥』の収録曲で、Paulineがソウル・シンガーのCarl Carwellと爽やかにデュエットしています。

Seawind / Seawind (海鳥)

●収録アルバム:Seawind / Seawind (海鳥) (1980年)

曇天の海を飛び交う海鳥をデザインした美しいジャケットが印象的なこのアルバムは、Seawindの4作目。George Dukeがプロデュースを担当しており、フュージョン、AOR、ファンクの要素がバランス良くブレンドされています。バンド名のように、ハワイの海風が香るような心地よいサウンドです。

Art Garfunkel / Hang On In (北風のラストレター) (1981年)

Art GarfunkelはNY生まれのシンガー・ソングライター。Paul Simonと組んだ「Simon & Garfunkel」の活動が有名ですが、70年代以降はソロ活動に専念し、高音域の美しいテナー・ヴォイスをじっくり聴かせる良質なアルバムを作っています。「Hang On In」は、アルバム『Scissors Cut』から、日本でのファースト・シングルとなった曲。原題は "くじけずに頑張る" という意味ですが、"北風のラストレター" という邦題になりました。"冷たい北風にも負けないで(頑張ろう)" というニュアンスの表現でしょう。ビターなメロディと合っていると思います。"ラストレター" の部分は歌謡曲っぽいですね。

Art Garfunkel / Scissors Cut

●収録アルバム:Art Garfunkel / Scissors Cut (北風のラストレター) (1981年)

Art Garfunkelの5枚目のソロ・アルバム。「北風のラストレター」はアルバムの邦題にもなりました。「Hang On In」はアップ・テンポなナンバーですが、それ以外は穏やかで静かな曲で構成された、とても美しいアルバムです。

Randy Crawford / Trade Winds (貿易風) (1981年)

Randy Crawfordはアメリカの女性Jazz/R&Bシンガー。The Crusadersの1979年のヒット曲「Street Life」の熱唱などで有名ですね。「Trade Winds / 貿易風」は、アルバム『Secret Combination』のラストを飾るスケールの大きな曲。Nick DeCaroのアレンジする美しいストリングスに包まれて、Randy Crawfordが雄大に歌っています。Rod Stewartも1976年の名作『Night On The Town』のラストで、この曲を熱唱しました。

Randy Crawford / Secret Combination (愛の諜報員)

●収録アルバム:Randy Crawford / Secret Combination (愛の諜報員) (1981年)

Randy Crawfordの5枚目のアルバム。Tommy LiPuma(プロデュース)、Al Schmitt(エンジニア)、Nick DeCaro(ストリングス・アレンジ)という黄金のコンビが制作した名作です。『愛の諜報員』という邦題には違和感を感じますが…

America / You Can Do Magic (風のマジック) (1982年)

Americaは70年代に「名前のない馬」「Ventura Highway」「金色の髪の少女」などのヒット曲を連発した名グループ。爽やかでキャッチーなこの曲は、英国の優れたメロディ・メイカーであるRuss Ballardによる書き下ろしで、Billboard Hot 100チャートの8位をマーク。しばらく低迷していたAmericaにとって久々のTop 10ヒットになりました。収録アルバムのジャケットには緑の草原が気持ちよく広がっており、草原を吹きぬける風が目に見えるよう。「風のマジック」という清々しい邦題は、このジャケットからヒントを得たものと思います。

America / You Can Do Magic (風のマジック)

●収録アルバム:America / View From The Ground (風のマジック) (1982年)

Americaの10作目のスタジオ・アルバムで、「風のマジック」を書いたRuss Ballardがプロデュースに関わっています。「風のマジック」はアルバムの邦題にもなりました。デビュー時のAmericaはDan Peek、Dewey Bunnell、Gerry Beckleyのトリオ編成でしたが、1977年にDan Peekが抜け、本作ではBunnellとBeckleyの二人がジャケットに写っています。

Alessi / Put Away Your Love (そよ風にくちづけ) (1982年)

Alessiは、Billy AlessiとBobby Alessiによる双子のポップ・ロック・デュオ。ジャケットの写真を見ると分かるように、二人はとても美形です。「Put Away Your Love」は5枚目のアルバム『Long Time Friends』の収録曲。甘さと切なさの加減が絶妙なメロディは、「そよ風にくちづけ」の邦題にぴったり。これをハイトーンの美声で爽やかに歌っています。

Alessi / Long Time Friends (そよ風にくちづけ)

●収録アルバム:Alessi / Long Time Friends (そよ風にくちづけ) (1982年)

Alessiの5作目。当時絶好調だったChristopher Crossとワーナー重役のMichael Ostinがプロデュースを担当し、Quincy Jonesがエグゼクティヴ・プロデューサーを務めました。Christopher Crossにとって初のプロデュース作品です。収録曲は全てAlessi兄弟のオリジナル。Christopher Crossがプロデューサーであるせいか、アルバム全体の雰囲気に、どこかChristopher Crossの名作『南から来た男』に近いものを感じます。

Frankie Bleu / Take Your Time (Vanessa's Song) (潮風のバラード) (1982年)

Frankie Bleuは70年代にシアトルで活動したGabrielというバンドの中心人物で、本名はFrank Butorac。この曲は、Frank BotoracがFrankie Bleu名義で出した唯一のソロ・アルバム『Who's Foolin' Who?』の収録曲です。爽やかでメロウ、とてもロマンティックなこの曲には "Vanessa's Song" という女性の名前のサブ・タイトルが付いています。ちなみに、「潮風」と書いて「かぜ」と読ませます。

Alessi / Long Time Friends (そよ風にくちづけ)

●収録アルバム:Frankie Bleu / Who's Foolin' Who? (潮風のバラード) (1982年)

Frankie Bleuの唯一のソロ・アルバム。Joe Chemayがプロデュースをしています。白み始める夜明け前の海の風景を収めた美しいジャケットは日本盤のみのデザイン。オリジナルのジャケットには腕組みをするFrankie Bleuが写っています。「潮風のバラード」はアルバムの邦題にもなりました。

David Lasley / Got To Find Love (1982年)

David Lasleyは美しいファルセット唱法で知られるセッション・シンガー。優れたソングライターでもあり、Boz Scaggsの1980年のヒット曲「Jojo」などを書いています。コンテンポラリーな作風の「Got To Find Love」は哀愁味のあるメロディが魅力。「風」の邦題は付いていませんが、収録アルバムのタイトルに「風のファルセット」という邦題が付いているので、セレクトしました。David Lasleyはファルセットのみでこの曲を歌っています。

David Lasley / Missin' Twenty Grand (風のファルセット)

●収録アルバム:David Lasley / Missin' Twenty Grand (風のファルセット) (1982年)

David Lasleyのセカンド・アルバム。「Got To Find Love」はコンテンポラリーな曲ですが、他にアコースティック、ドゥーワップ、ジャズ、レゲエなど、収録曲は実に多彩です。驚くことに、David Lasleyはこれら全ての曲をファルセットのみで歌っており、見事な歌唱力です。

Andrew Gold / Warm Breezes (1999年)

ラストは番外編。この曲にも「風」という邦題は付きませんが、タイトルの通り、暖かくそよぐ風を感じるような爽やかな曲です。Andrew Goldはカリフォルニア生まれのシンガー・ソングライター。多彩な楽器を使いこなすマルチ・プレイヤーとして様々なアーティストのレコーディングを支えたほか、矢沢永吉のアルバムをプロデュースするなど幅広く活動し、2011年に59歳で他界しました。「Warm Breezes」は同名のアルバムのタイトル曲。こうした穏やかな曲での爽やかさはこの人の一番の魅力です。私、管理人のAuthor Nameもこの曲から取りました。

Andrew Gold / Warm Breezes

●収録アルバム:Andrew Gold / Warm Breezes (1999年)

Andrew Goldの1999年のアルバム。CM用の楽曲を集めたアルバムで、日本のみで発売されました。「Warm Breezes」はバドワイザー・ファインモルトの1999年のCMソングです。

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